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静注用脂肪乳剤intravenous lipid(fat)emulsion(ILEまたはIFE)は,脂肪をカロリー源として静脈内に投与するための栄養補給用輸液製剤である。1981年に発売された製剤であるが,21世紀に入り,局所麻酔薬中毒の解毒薬としての効果が基礎研究から発見され,現在では脂溶性薬物中毒の解毒薬としても臨床適用される症例が増えてきた。症例の増加に伴い,複数の学会によるガイドラインが発表されたが,その作用機序,臨床的効果,投与方法,安全性については,一定のコンセンサスが得られていなかった。2016年,米国の学会を中心としたworkgroupにより,システマチックレビューに基づく臨床評価が発表された。
本コラムでは,局所麻酔薬中毒に対するILE解毒治療の歴史的経過,投与方法,作用機序,最新の臨床評価についてまとめた。
Summary
●静注用脂肪乳剤(ILE)は栄養補給用輸液製剤であるが,1998年,Weinbergらの基礎実験の報告により局所麻酔薬中毒に対する解毒効果が発見された。2006年,Rosenblattらが,ブピバカインによる心停止症例で初めてヒトに応用したことを報告した。
●局所麻酔薬中毒に対するILEの解毒治療法は,多くの学会により評価され,投与方法の推奨が作成された。
●局所麻酔薬中毒に対するILEの作用機序には,細胞外(lipid sink),細胞内(脂肪酸代謝),細胞膜(イオンチャネル)など,さまざまな仮説が提唱されている。特にlipid sink理論は最も有力であるが,複数の機序が組み合わさっていると考えられる。
●薬物の脂溶性の指標であるオクタノール/水分配係数(log P)が高い薬物の中毒に対し,ILEの解毒治療の症例報告が蓄積されてきた。
●最新のシステマチックレビューでは,局所麻酔薬以外の薬物中毒に対するILE解毒治療の臨床評価はまだ定まっていない。
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