連載 保健婦はおもしろい
“出会い”それは私のエネルギー源
橋本 しげ子
1
1三重県上野保健所
pp.1114
発行日 1991年12月10日
Published Date 1991/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900394
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「あっ!保健婦さん」とかけよる彼女。それは思いもかけない出会いであった。19年前,私が保健婦として初めて働いた職場が精神科の病院,そこで関わったのが彼女だった。家族関係の歪みを一身に背負ってしまった故の発病。彼女は私の緊張と不安をいち早く察知し,こちらの対応に敏感に反応した。私は彼女と家族の間でウロウロするだけであった。今,彼女の中に当時の保健婦の存在が,どんな想いで残っていたのだろうと心が痛む。たくさんの人たちの心の苦しみに出会い,自分自身の未熟さを見せつけられた日々であった。
「保健婦さん,次の健康相談はいつ来てくれる?」と楽しみにしてくれるHさんたち。人口4000人程の村役場での毎日は,健康相談・健診等と目まぐるしく過ぎていく。しかし保健婦を見る眼がたえず周りにあり,時には保健婦としての存在そのものを揺さぶられるような気がした。「人口規模も手頃で,働きやすいでしょう?」と他の保健婦からは言われたが,私自身は逆に仕事に対する厳しさを知った。村の人たちの生き様に触れ,的確にニーズに応えていないと住民からソッポをむかれてしまう。小さい村故に活動対象の逃げ場がないから。
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