連載 始める人と関わる人のための「消化器病理診断の基礎知識」[4]
肝臓:やはりグリソン鞘がカギです
福嶋 敬宜
1
1ジョンズ・ホプキンス大学医学研究所病理部
pp.754-761
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100427
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ありふれた病変には,ありふれている病変であるが故なのか教科書などにほとんど記載のない落とし穴があったりするものです.「大腸癌手術後,肝転移切除標本」もその1つでしょう.
大腸癌の肝転移巣といえば,その割面像は類円形,灰白色調で中心壊死性,そして周囲の正常肝組織との境界は概ね明瞭と相場が決まっています.だから手術切除断端の評価は肉眼的に十分把握できると思っていました.なのに,しばしば外科の先生から「断端を見て下さい」「胆管は大丈夫ですか?」と迅速依頼が来るのです.初めての時は,摘出標本を見ながら「胆管癌も疑ってる症例なのかな?」などとピントはずれのことを考えたりしていましたが,そうではありませんでした.大腸癌は転移先の肝臓でしばしば胆管上皮を置き換えながら胆管内で発育進展し,それが断端に顔を出すことがあるのです.
「肝臓の検索ではグリソン鞘がカギ」という大原則は肝細胞癌(門脈内腫瘍栓など)や慢性肝炎(グリンソン鞘の拡大,炎症細胞浸潤など)の場合だけでなく,肝転移標本の検索でも例外ではなかったのです.
はじめに
本連載は,臨床医が病理診断を理解するための手助けとして,なるべく病理所見の羅列ではなく病理医の検索方法や思考過程などを説明しています.気を楽にしてお読み下さい.“病理医の目”の項では,本文に関連した病理学的トピックスを取り上げます.
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