特集 Infection Control
7.選択的消化管除菌
志馬 伸朗
1
Nobuaki SHIME
1
1京都府立医科大学 集中治療部・感染対策部
pp.39-44
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100007
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1984年,Machintoshが世に出た記念すべき年の1月,オランダのStoutenbeekやvan Saeneら1)は,Intensive Care Medicine誌に画期的な論文を発表した。選択的消化管除菌selective digestive decontamination(SDD)である。彼らは,5日間を超えて人工呼吸を要した122人の多発外傷患者を,SDDを適用しなかった59人と,適用した63人に後方視的に分類し,患者予後を比較した。SDDを適用しなかった場合の院内感染症発生率は81%であったが,適用した患者では16%であり,SDDを適用したことで劇的な低下を認めた。この発表以降,全世界で50件を超える無作為化比較試験(RCT)が施行され,その有効性が検討されてきた。
さて,四半世紀が過ぎた今,本治療法は依然として議論のなかにある。例えば,我が国において,人工呼吸患者に対する肺炎予防策としてSDDを“頻繁に施行している”施設は,全体の約14%にすぎない(著者未発表データ)。また,2008年に改訂された敗血症の国際的ガイドラインであるSurviving Sepsis Campaign Guidelines2)においても,作成委員の間でその評価は二分され,最終的には本治療法に関する特別な推奨はなされなかった。
なぜこのような事態が生じるのか,多くの臨床医は疑問をもちながら,その施行をためらっていると思われる。本稿では,最新の知見も含めながら,SDDにまつわる知識を整理し,日本の臨床医が本治療法に対してどのように向きあうべきか,を考えてみることにする。
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