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はじめに
近年,ダブルバルーン小腸内視鏡が開発され,小腸疾患の診断に盛んに用いられている.小腸内視鏡検査は微細な病変の見つけ出しに優れ,生検や止血,拡張術などの治療ができる利点はあるものの,往々にして診断が主観的で局所所見にとらわれやすいという欠点がある.一方,小腸X線検査は病変の大きさ,存在部位,配列あるいはその経時的推移を客観的に評価可能である.
1974年に中村ら1),小林ら2)によって小腸二重造影法が開発され,微細病変の描出が可能となり,小腸の診断学は著しく向上した.しかし順行性の造影では①小骨盤腔内における小腸係蹄の重なり,②空気不足による伸展不良,③バリウムの付着低下などが原因となり,下部小腸および回腸末端部の描出能は満足できるものではなかった.これらの欠点を補う造影法として,1985年に川村ら3)は選択的逆行性回腸造影法を開発した.大腸内視鏡検査後に回腸末端にガイドワイヤーを留置した後,全長240 cmの造影用long tube(double lumen one balloon tube,Japan Sherwood社製)を回腸末端まで挿入し,バリウムと空気を注入する手法であった.1992年竹中ら4)は,本法がゾンデ式小腸二重造影法に比べ,下部小腸,回腸末端の描出能が優れていることを証明した.しかし,回腸末端で固定したlong tubeの先端バルーンが上行結腸に逸脱した場合,造影される範囲が狭くなり良好な二重造影が得られないなどの問題点があった.そこで,1995年竹中らは,チューブ先端の逸脱を防ぐために改良を加え,逆行性回腸造影専用のダブルバルーンチューブ(イレウスチューブ18DB2400T先なしタイプ,Create Medic社)(Fig. 1)を考案し,その手技を確立させた5).
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