症例ライブラリー 術中の緊急コンバージョン—方針転換に対する迅速な対応
重症交通外傷のIVR中……
早水 真理子
1
,
糸洲 佑介
2
,
和田 剛志
1
Mariko HAYAMIZU
1
,
Yuusuke ITOSU
2
,
Takeshi WADA
1
1北海道大学大学院医学研究科 侵襲制御医学講座救急医学分野
2北海道大学病院 麻酔科
キーワード:
ダメージコントロール手術
,
open abdominal management
,
OAM
,
大量輸血プロトコール
,
MTP
,
外傷性凝固障害
Keyword:
ダメージコントロール手術
,
open abdominal management
,
OAM
,
大量輸血プロトコール
,
MTP
,
外傷性凝固障害
pp.1156-1159
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101203115
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■症例
75歳の男性。身長170cm,体重63kg。乗用車の単独事故で受傷。車は大破しており,シートベルトは装着していなかった。初療時のprimary surveyでは,気道開通,呼吸数24回/min, 経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)99%(リザーバーマスク10L/min),心拍数70bpm,血圧103/77mmHg,Glasgow coma scale(GCS) E3V4M6で,簡単な会話は可能であった。胸部および骨盤X線では明らかな異常所見を認めなかったが,FASTにて脾周囲およびMorrison窩にエコーフリースペースを認めた。頭部CTでは外傷性くも膜下出血を,体幹部造影CTでは血管外漏出像を伴う肝損傷(Ⅲa型),腹腔内血腫,肋骨骨折を認めた。既往歴,内服歴は不明。
腹腔内出血に対し,interventional radiology(IVR)による止血術を行う方針となった。意思疎通可能,自発呼吸で酸素化は問題なく,収縮期血圧は安定していた。プロポフォール少量持続投与+フェンタニル間欠投与による鎮静および局所麻酔下にIVRを開始した。血管造影では,肝動脈の分枝から多発する血管外漏出を認めた。IVR手技中に収縮期血圧が低下し,患者は不穏状態となってきた。赤血球液(RBC),新鮮凍結血漿(FFP)の急速投与を開始したが,ヘモグロビン値(Hb)は6g/dL台から上昇せず,開腹手術の方針となった。
さて,あなたならどうする?
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.