徹底分析シリーズ 術前禁煙ができない患者へのアプローチ
巻頭言
田辺 久美子
1
1岐阜大学大学院医学系研究科 麻酔科・疼痛医学分野
pp.649
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202967
- 販売していません
- 文献概要
喫煙習慣が,呼吸器合併症以外にもさまざまな周術期合併症を増加させることは,多くの麻酔科医が知るところとなった。手術患者への術前禁煙指導は,程度の差はあれ,いずれの施設でも行われていると思われる。そこで本徹底分析シリーズでは,術前に禁煙指導しても,なかなか禁煙してもらえない,あるいは十分な禁煙期間が設けられなくて困っている,という麻酔科医に向けて,喫煙行動をさまざまな角度から解説し,問題解決の糸口を提案する。また,麻酔科医は周術期合併症減少のための術前禁煙に目が向きがちであるが,患者の健康人生を考えれば,手術をきっかけとして生涯の禁煙継続につなげることが重要である。術前禁煙率の上昇,術前禁煙期間の延長,そして術後の禁煙継続は,麻酔科医のみでできるものではなく,すべての医療者の理解と協力が必要である。
とはいえ,喫煙は日本では合法であり,喫煙者には喫煙する権利がある。医療者の主張をただ押し付けるのではなく,いかに喫煙者に説明し,同意が得られるかが重要である。また,喫煙には依存症という側面もあるため,禁煙の同意が得られても実際にできるかは別,という難しさもある。本徹底分析シリーズや日本麻酔科学会が発行している『周術期禁煙プラクティカルガイド』が,読者の診療の一助になることを期待している。
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.