症例ライブラリー 脊髄幹麻酔で困ること
脊麻の麻酔高が上がらない!
黒川 達哉
1
,
相川 勝洋
1
Tatsuya KUROKAWA
1
,
Katsuhiro AIKAWA
1
1北海道大学病院 麻酔科
キーワード:
無効脊麻failed
,
spinal anesthesia
,
FSA
,
再穿刺
,
薬液注入孔
,
馬尾神経障害
Keyword:
無効脊麻failed
,
spinal anesthesia
,
FSA
,
再穿刺
,
薬液注入孔
,
馬尾神経障害
pp.6-10
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202788
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■症例
82歳の女性。身長155cm,体重60kg。右大腿骨転子部骨折に対して骨接合術が予定された。既往歴は高血圧,脂質異常症。認知機能は問題なく,日常生活動作(ADL)は自立していた。アレルギー歴はなし。血小板数や凝固能は正常であった。麻酔は麻酔科専攻医1年目が担当して,脊髄くも膜下麻酔を行うこととなった。あなたは上級医として監督する立場である。
■経過
疼痛が強く,側臥位を取ることが困難であったため,事前に0.375%ロピバカイン15mLを用いて大腿神経ブロックを施行した。その後に左側臥位でできる限り前屈位とし,L3/4棘突起間にマーキングを行った。1%リドカイン2mLを使用し,穿刺部の局所浸潤麻酔を行った後に25Gのペンシルポイント針を用いて正中法で穿刺を行った。慎重に針を進め,髄液の逆流が認められた時点で0.5%等比重ブピバカイン2.5mLを緩徐に注入した。側臥位のまま5分ほど待ち,コールドテストで右半身の麻酔域を確認したところ,L4までしか冷覚消失が認められなかった。20分ほど観察を続けたが,麻酔域はL3までしか上がらなかったため,上級医であるあなたが呼ばれた。専攻医は「いつもと比べて髄液の逆流が遅かったように思います。接続部からの薬液漏れはなく,シリンジ内のブピバカインはすべて注入しました」と言っている。
さて,あなたならどうする?
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