症例ライブラリー 脊髄幹麻酔で困ること
手術中に痛がり出した
鴨田 知明
1
,
古谷 健太
1
Tomoaki KAMODA
1
,
Kenta FURUTANI
1
1新潟大学大学院 医歯学総合研究科 麻酔科学分野
キーワード:
大腿骨近位部骨折
,
高齢者
,
脊柱管狭窄症
,
脱抑制
Keyword:
大腿骨近位部骨折
,
高齢者
,
脊柱管狭窄症
,
脱抑制
pp.11-13
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202789
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■症例
91歳の女性。身長139cm,体重35kg,BMI 18.1。既往に高血圧症,骨粗鬆症,アルツハイマー型認知症があり,要介護4。特別養護老人ホームに入所しており,今朝,職員が訪室した際,ベッドの脇に倒れているところを発見し,救急要請した。右大腿骨頸部骨折と診断され,左側臥位での人工骨頭置換術が予定された。予定手術時間は1時間30分。会話はやや不適当だが落ち着いており,抗血小板薬や抗凝固薬の内服もなかったため,脊髄くも膜下麻酔を計画した。
■経過
左側臥位にて局所麻酔を実施後,L3/4より0.5%等比重ブピバカイン3.0mLをくも膜下投与した。穿刺時に,穿刺針から脳脊髄液(CSF)の流出を確認した。薬物投与から15分後に麻酔域がT10まであることを確認し,再度,側臥位に体位を取った。さらにその15分後に手術が開始された。手術開始30分後から患者の体動があり,そのまま様子をみていたが,心拍数100bpm,血圧168/80mmHgとなり,「痛い」と訴え始めた。麻酔効果不良を疑ったが,疼痛の訴えは軽度であり,鎮静薬の併用で管理できると判断した。ミダゾラム2mgを緩徐に静脈投与することで,血圧は下がり体動は少なくなったため,そのまま手術は継続した。手術開始1時間後,再び体動が激しくなり,手術操作に一致して痛みを訴えるようになった。鎮痛域を再度確かめるとL1で冷覚あり,脊髄くも膜下麻酔の効果不良と判断した。術者に状況を説明すると,手術はあと20分程度で終了すると返事があった。
さて,あなたならどうする?
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