Japanese
English
特集 麻酔
脊麻の調節
Control level of spinal anesthesia
北原 哲夫
1
Tetsuo KITAHARA
1
1東京逓信病院外科
1Department of Surgery Tokyo Teisin Hospital
pp.1031-1036
発行日 1962年10月20日
Published Date 1962/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202981
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Ⅰ.緒言
脊麻の調節ということばは,広く解釈すれば麻酔の強さや持続についてもいえようが,普通は麻痺高を任意に調整することを意味する.この点に関してBier以来各種の工夫がこらされては来たが,それにもかかわらず未だ真に満足すべき段階には達せず,麻痺高の調節が意のごとくならないのが,急変事故の問題とともに,脊麻の欠点として指摘されている.
いま先人の足跡をたどつて見ると,Bierは5%トロパコカイン液1mlに髄液4mlを混じて下肢の脊麻を,また髄液9mlを加えてさらに高位の脊麻を企て,Pitkinはスピノカインと称するノボカイン低比重液を作り,主として骨盤高位の角度を加減することにより麻痺高の調節を試みた.KillianはPitkinの変法として水平位でスピノカインを注入,適当な麻痺が現われてからTren-delenburg位に移して薬液の上昇を阻止する方法を提案した.しかしこの程度のことで十分なコントロールができるとはとうてい考えられず,かくてKirschnerは独特の創意に基づく帯状脊麻法を発表した.その根拠は比重の異なる2液をきれいに重ねるには,重い液の表面に軽い液を静かに注ぐ以外にないとの考えから出発し,まず髄液に界面を作るため高度の骨盤高位で腰仙部より空気を注入,その量を加減することにより髄液面を適当の高さに押しやつた.
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