徹底分析シリーズ 日帰り手術の麻酔
巻頭言
宮津 光範
1
1あいち小児保健医療総合センター 麻酔科
pp.317
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202486
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- 文献概要
日帰り手術の麻酔をきわめると麻酔が上手くなり,社会保障制度についても考えたくなる
今回の徹底分析シリーズは「日帰り手術の麻酔」である。「日帰り手術なんて,うちではまったくやってないし…」という読者にもぜひ目を通してほしい。なぜなら,日帰り手術の麻酔には,日々の麻酔を上手に行うエッセンスがぎっしり詰まっているからである。そもそも何をもって“上手な麻酔”とするかについての定義はないが,本文を読めばわかっていただけるだろう。「日帰り手術」というフィルターを通して日々携わる周術期管理を振り返ることができるはずだ。もちろん,日帰り手術を始めようとしている施設の読者には,すぐに役立つ内容ばかりである。
「日帰り手術の麻酔」に焦点を当てた理由はもう一つある。コロナ禍の世になって早3年,病棟入院制限による手術の中止を経験して筆者は考えた。「入院ができないなら日帰りでやればいいじゃない?」しかし,日帰り手術は病院としては儲からない。なぜなら,現行の制度がそういう診療報酬体系になっているからである。医療費が安く済むということは,支払い者である保険者の立場,社会保険料や税を納める国民の立場からすれば,ありがたいことである。予想より速いペースで進む少子化や医療技術の進歩により,現在の社会保障制度はもう長くはもたない。解決策の一つが,診療報酬の「入院手術から日帰り外来手術へのシフト」になると,筆者は考えている。特に,冒頭の「これから」と,最後の「医療経済」を読めば,その方向性への理解が一層深まるであろう。
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