徹底分析シリーズ 周術期抗菌薬とその周辺
巻頭言
宮津 光範
1
1あいち小児保健医療総合センター 麻酔科
pp.247
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202197
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- 文献概要
麻酔科医は抗菌薬を知らない。周術期に投与する薬物の中でわれわれ麻酔科医の関心が最も低い薬物,それが抗菌薬である。「抗菌薬は麻酔の薬じゃないし,そもそもあれは外科医が決めるものでしょ!?」という声を聞く。でも,よく考えてほしい。われわれ麻酔科医は外科医から指示された薬物を,ロボットのようにただ言われたとおりに投与するだけの存在でよいのか? 鎮痛薬は勉強してから使うのに抗菌薬の勉強はしなくてよいのか? そんなことはないはずと思い,本徹底分析シリーズの構成を考えた。
抗菌薬の基本から始まり,選択根拠,外科医の考え方,標準から外れる体重(肥満者や小児・新生児),大量出血・長時間手術などのイレギュラー,アレルギー,耐性菌などなど,網羅的で実践的な内容となった。うん,これは勉強になる!!
ところが,いざ執筆依頼をする段階になってがぜん難航することになった。麻酔科医には感染症や抗菌薬について語ることができる者がほとんどいなかったのだ。これは麻酔科医のこの領域への関心の薄さの現れでもあろう。コロナ禍の間隙を縫って,感染症界隈第一線のエキスパート陣にお願いせざるを得なかった。しかし,多忙な折にもかかわらず,いずれも素晴らしい論稿をお寄せいただいた。
次回,LiSAでこのテーマの特集があるのは何年先のことだろう? その頃には,感染症に詳しい次世代の麻酔科医が多数生まれていることを密かに期待したい。感染症好きの一麻酔科医としては,今回の特集が一人でも多くの読者の心に響き,感染症や抗菌薬の世界に興味をもつ嚆矢となることを願うばかりである。
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