徹底分析シリーズ 発達期の脳に対する麻酔・鎮静薬の影響:いまとこれから
巻頭言
小原 崇一郎
1,2
1帝京大学大学院 公衆衛生学研究科
2都立大塚病院 麻酔科
pp.441
発行日 2022年5月1日
Published Date 2022/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202241
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- 文献概要
「麻酔を受けると,こどもが学習障害になったりしませんか?」——保護者から,こんな質問を受けることがあります。
発達期の脳に対して麻酔・鎮静薬が長期的な影響を与える可能性は,小児麻酔領域において過去20年間にわたって広く議論され,海外の一般紙誌でも大きく取り上げられてきました。GAS,PANDA,MASKといった,親しみやすく覚えやすい略称のついた大規模前方視臨床研究の結果から,単回かつ短時間であれば新生児・乳児期の麻酔・鎮静薬への曝露は,長期的な神経発達に影響しない可能性が高いことが示されました。ただし,麻酔・鎮静薬の神経毒性の影響を受けやすい年齢,そして曝露回数や曝露時間,投与量などに依存した影響など,未解決の課題もいまだに残っています。
とはいえ,麻酔・鎮静を生業としているわれわれ麻酔科医にとってこれは,正直に言えば,深掘りをしたくはない問題かもしれません。では,視点を変えてみて,この問題を扱うのは誰がベストでしょうか? 小児科医でも外科医でもなく,やはり麻酔科医の果たす役割は決して小さくはありません。
こどものアドボカシー(advocacy,代弁者)として,麻酔科医の出番かもしれません。
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