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世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症。そのパンデミックの渦中で,患者の治療にあたる医療従事者も命の危険に曝されていることが社会に再認識された。これほどまでの劇的な感染症は確かに人目を引くが,われわれの日々の臨床でも,さまざまな曝露の危険があることを忘れてはならない。
身近な危険として放射線はどうだろうか。麻酔を依頼される治療用放射線への曝露は,ほぼ皆無になるように配慮され,診断用放射線への医療従事者の被曝は,法律上もフィルムバッジを着用してモニタリングする義務が課されている。完全に安全とはいえないが,少なくとも影響が最小限になるような配慮がなされている。
しかし,危険はそれだけではない。手術室は,多くの曝露の可能性があるのだ。誰もが一度は嗅いだことのあるにおいによる環境汚染について,仕事で偶発的に吸入せざるを得ない揮発性麻酔薬の室内の濃度と人体への影響はどうか。そして,電気メスを進める軌跡から立ち登る紫色の煙霞は,嫌な臭いを我慢さえすれば,それでよいのか。腹腔内温熱化学療法(HIPEC)では,熱せられた抗がん薬が手術室内へと漏れる心配はないのだろうか。外科医ほどではないにせよ,麻酔科医も針刺しの危険性が高い診療科である。1回の針刺し事故でいったい何に感染し得るのか。人体への感電(マクロショックとミクロショック)の影響はどれほどまでに深刻なのか。そして,自殺率が格別に高いとされる麻酔科医のココロについて,何か特別な配慮が求められるのではないか。
そのような視点から,意外と身近に潜んでいる麻酔科医の日々の曝露の危険について徹底分析した。これを機会に,リスクと防御の知識を再度確認してみてはいかがだろうか。この道のエキスパートたちからわれわれに向けられた,意外な事実と熱いメッセージを今,お届けします。
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