徹底分析シリーズ 帝王切開の全身麻酔を紐解く
巻頭言
松田 祐典
1
1埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科
pp.1077
発行日 2021年11月1日
Published Date 2021/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202112
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- 文献概要
全身麻酔下帝王切開は,術中覚醒・気道確保困難・誤嚥の頻度が高く,胎児に対する薬理学的曝露の懸念がある。さらに,脊髄幹麻酔の進歩によって帝王切開術後早期回復の観点からも忌避されつつある。しかしながら,抗凝固療法の一般化や患者背景の多様化に伴い,脊髄幹麻酔が常に選択できるとは限らない。帝王切開の全身麻酔が少なくなっているからこそ,本徹底分析シリーズを通じてその必要性を再考していただきたい。
帝王切開の全身麻酔におけるエビデンスは,さらに洗練されてきた。DREAMY study(2021年)は,帝王切開における術中覚醒が従来思われていたよりも3倍も頻度が高いことを報告した。一方でビデオ喉頭鏡の発達により,気道確保困難に遭遇する頻度は格段に少なくなった。麻酔薬と子宮筋収縮に関しては,カルシウムが注目されている。さらに,帝王切開術後における授乳の観点を加味した多角的鎮痛を見直したい。
予定帝王切開の全身麻酔について,弘前大学麻酔科での経験を共有し,別の視点から帝王切開の全身麻酔を考える。また,時間的に切迫された超緊急帝王切開ならではの,特殊な状況についての理解も深めたい。
より安全で,より質の高い周産期診療を目指すため,麻酔科医にできることは少なくない。麻酔だけでなく,患者安全のスペシャリストとして,自ら日々進化し続けることが,われわれのプロフェッショナリズムである。
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