徹底分析シリーズ パルスオキシメータ:世界の患者安全を変貌させた発明
本特集のおわりにあたり A Summary on Closing this Special Feature—執筆者の背景と着想から今日までの日本の流れ Background of the Contributors and How Things Developed in Japan: From Inception to the Present
宮坂 勝之
1,2
Katsuyuki MIYASAKA
1,2
1和洋女子大学
2聖路加国際大学
pp.296-308
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201935
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パルスオキシメータは,肌の色,人種,成人・乳児,体型,測定部位,機種などの違いを超えて利用でき,しかもスイッチを入れるだけで0%から100%の単純明快な数値が表示され,多くの健康人では「それらしい」数値が安定して表示される。しかしその数値は,青柳卓雄博士の言葉を借りれば,「たまたまそれらしい数値」なだけであり,数値は読むのではなく,数字が表示される背景も含め,臨床家は解釈すべきである。すなわち,装置としての安全性や安定性,使いやすさとは別に,表示される数値の正確性と信頼性にかかわる測定理論,そして数値の正しい解釈には生理学と医学的な理解が必要であることが見落とされてはならない。
パルスオキシメータは,酸素化のモニターであり換気(呼吸)のモニターではないことは,一般人はもとより医療者でも看過しがちである1)。酸素投与を受けている鎮静中の患者では100%表示が安心値ではない。経皮的な測定であり,さまざまな要因の影響を受けやすい。体動のない安定状態で確実に測定されている場合の信頼度は高く,極端に低い値でも患者の臨床症状よりは表示値を採用して対処すべき場合がある。しかし,医学的な理解の欠如が不幸な結果をもたらす場合が知られる2)。COVID-19パンデミックで自覚症状のない隠れた低酸素症の見落とし3,4),あるいは自宅や病院外で観察中の患者にみられる予期せぬ死亡や行き倒れなどの背景である可能性が示唆されている5)。
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