徹底分析シリーズ パルスオキシメータ:世界の患者安全を変貌させた発明
パルスオキシメータの抜本的な精度改良 Using a Fundamental Approach to Improve the Accuracy of Pulse Oximetry—青柳博士が生涯を捧げた研究 The Research to which Dr. Aoyagi Devoted his Life
伊藤 和正
1
Kazumasa ITO
1
1日本光電工業株式会社 技術開発本部 バイタルセンサ技術開発部
pp.252-256
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201924
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2007年頃,青柳卓雄博士が社内の研究室会議の場に新聞の切り抜きを持って出席したことがある。アラーム見逃しによる医療事故を伝える記事であった。開口一番,「根本原因は機器性能にある。性能改善は医療の現場にとって必須である。計測技術を改善し医療事故を減らさなければならない」と主張した。そして「理論を構築することでパルスオキシメータの性能を抜本的に改善すれば,採血による患者負担を軽減できるだけでなく,医療従事者のアラーム疲弊1)によるアラーム関連事故の予防にもつながる。さらに,血中吸光物質濃度の無侵襲連続測定の手法として,医療に寄与できる応用の可能性が広がる」との強い使命感を示した。
今日,closed loop制御機能を搭載した機器が活躍し始め,パルスオキシメータに求められる精度の要求レベルも変わりつつある。博士は,当初から「医療の究極の姿は,治療の自動制御である」という明確なビジョンをもち,性能改善に邁進していた。
本稿では博士の取り組んできた理論構築と多波長化の研究を紹介する。
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