徹底分析シリーズ 出血治療戦術—適応外の製剤も駆使して止血を図る
巻頭言
香取 信之
1
1東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座
pp.1145
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201819
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- 文献概要
出血による凝固障害は時間とともに変化し,より複雑で治療困難な病態へと進行していく。止血に難渋し,出血性ショックから心停止に至った患者の蘇生は非常に困難であり,早い段階での適切な出血治療が求められる。しかし,従来の輸血療法のみでは治療が奏効しないこともあり,近年は凝固因子濃度を効率的に上昇させることが可能な凝固因子製剤への期待が高まっている。ところが,日本では凝固因子製剤の出血治療に対する適応承認はなく,医師の裁量によって散発的に使用されているのが現状である。
2019年,日本輸血・細胞治療学会は『大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン』を公表し,フィブリノゲン製剤やプロトロンビン複合体濃縮製剤,遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤などの凝固因子製剤を使用した治療についても評価を行っている。日本の血液製剤使用に大きな影響を及ぼす学会のガイドラインにおいて,凝固因子製剤の適応外使用にまで踏み込んだ検討がなされた意義は大きく,輸血療法のみに依存していた日本の出血治療に変化が訪れている。
今回の徹底分析シリーズでは,救命を優先した出血治療をテーマとして,輸血用血液製剤だけでなく凝固因子製剤も駆使した出血治療戦術について解説する。
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