徹底分析シリーズ 麻酔科医の薬物依存
マトリから麻酔科医諸兄姉へ—医療用麻薬を語る
髙橋 正
1
Tadashi TAKAHASHI
1
1元 厚生労働省東北厚生局麻薬取締部(現:イオンタウン株式会社)
pp.414-417
発行日 2020年4月1日
Published Date 2020/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201643
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日本では,猛烈な痛みを伴うがん患者などのQOL向上を図る疼痛緩和医療が適切に行われ,また手術における麻酔として医療用麻薬が適切に躊躇なく医療現場で使われている。一方,世界中の国々では,麻薬乱用の途を滑り落ち,薬物依存症に陥る不幸な歴史が繰り返されていることも事実である。
薬物依存症に陥った者は誰一人として初回の乱用時に将来自らが依存症に悩むとは想像もしていない。誰もが“自分だけはいつでも止められるから”と安易に乱用に走っている。それは,医師も例外ではなく,医療用麻薬等の依存性薬物と日常的に接触する機会の多い医師だからこそ,その罠に陥るケースを私は数多く見てきた。ある地方都市の麻酔科医が麻薬自己施用を起因として院内で死亡したという事件についても交えながら医療用麻薬の現状を話していきたい。
覚醒剤の再犯率が65%を超え深刻な社会問題になっているが,モルヒネ,コカイン等医療用麻薬がもつ精神依存の強さは,覚醒剤と比較すると数倍あるといわれており,医療の最前線で活躍する麻酔科医には,今一度,医療用麻薬の怖さを熟知したうえで,その効能を最大に活かしていただきたいものである。
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