寄稿 3回シリーズ 統合失調症の姉
第2回 姉と柿
高崎 麻菜
1
1東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム
pp.78-82
発行日 2012年1月15日
Published Date 2012/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100974
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包丁
私は、自分が劣等感を感じるくらいなんでもできていた姉がどんどん崩壊していくことを、受け入れられずにいました。私にとってあんなに大きい特別な存在だったのに、勉強も運動もかなわない存在だったのに、こんなに変になってしまった。どこまでおかしくなるんだろう、姉はどうなってしまうんだろう、姉が姉でなくなっていってしまう、どうしよう……頭をかきむしりたくなるような気持ちでいっぱいになりました。
一方で同時に、“もう姉にはかなわないという気持ちを抱かなくて済むんだ、これで大丈夫、これで勝てる!”と、まるで何かの重圧から解放されたような感情がふつふつと湧いてきて、内心ガッツポーズをして喜んでいる自分がいました。そして喜んでしまう自分を、責める自分もいました。
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