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保険算定要件変更の背景
2018年4月から,経皮的冠動脈インターベンションpercutaneous coronary intervention(PCI)の要件の適正化として,診療報酬改定に伴う安定狭心症の保険算定要件が変更され,術前の機能的虚血評価が必須となった(表1)。従来は,安定狭心症であっても1方向からの造影で75%以上の狭窄病変が認められれば算定されていたが,新たに機能的虚血診断が保険算定に義務づけられた。つまり,75%の高度狭窄が存在していても虚血を証明しなければPCIの適応にならないということである。これには,米国の適切性基準appropriate use criteria(AUC)の導入に伴い,PCIの適切性に伴う臨床的な有益性とリスク,さらにはコスト面での検討が加わり,非急性期の不適切なPCIが著明に減少し,安定狭心症に対するPCIが適正化された背景がある。
こうしたPCIの適切性に対する取り組みを促すことになった経緯には,PCIと至適薬物療法optimal medical therapy(OMT)の比較試験の結果が大きく関与している。2007年に報告されたCOURAGE試験1)は,低リスクの安定狭心症を対象としていたが,十分な薬物治療の長期成績が有意狭窄病変に対するPCIと同等であり,虚血性心疾患治療に対するPCIの適応を大きく変えることになった。さらに,重症1枝安定狭心症のPCIに対する二重盲検試験であるORBITA試験2)では,両群間での運動耐容能や症状に有意差は認めず,薬物治療とPCIの効果に大きな違いがなかった。このような比較検討の結果から,PCIの適切性が問われるようになり,冠動脈狭窄の解除ではなく虚血の解除を目的とした適切なPCI適応がより求められる時代となっている。さらに最近では,心筋血流予備量比fractional flow reserve(FFR)などによる生理的な虚血評価にもとづいた適応の決定が重要視されてきている。
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