連載 漢方の歩き方 レーダーチャートで読み解く痛みの治療戦略:第29回
副作用① 甘草:甘いに注意
矢数 芳英
1,2
1東京医科大学病院 麻酔科
2温知堂 矢数医院
pp.568-575
発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200877
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矢:本連載の締めくくりに副作用を2回に分けて取り上げます。荒井先生は,漢方の副作用といえば何を考えますか?
荒:すぐに思いつくのが,甘草による偽アルドステロン症です。低カリウム血症になります。国家試験に出題されるので覚えました。
福:僕も,甘草の含有量が多い(6.0g/日),68.芍薬甘草湯を投与するときは,偽アルドステロン症に注意しています。
矢:では,同様に甘草が含まれる54.抑肝散を投与するときはどうですか? カリウム値を測定していますか?
福:いえ。54.抑肝散は1日量の甘草含有量が1.5gと少ないので,あまり気にしていません。
矢:では,福井先生は,どれくらいの含有量ならば気をつけるのでしょうか?
福:2.5g/日以上であれば気をつけると思います。効能書きに赤字で警告がありますから。
矢:確かに,甘草の含有量が2.5g/日以上の処方には,赤字で「偽アルドステロン症」の警告が表示されています。でも実際には,それより少ない54.抑肝散でも,偽アルドステロン症の報告は散見されます。ですから症例によっては,定期的な血液検査によるカリウム値の確認が必要なのです。
荒:へぇ〜,そうなんだ。
福:漢方の副作用として国家試験にも出るくらい有名な「偽アルドステロン症」ですが,その実態を正しく理解できているわけではなさそうです。
矢:それでは今回は,この甘草の副作用について勉強していきましょう。
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