徹底分析シリーズ 痛み治療の素朴な疑問に答えます
神経障害性痛で生じるClイオン濃度勾配は,GABAで痛みが生じるほど大きな変化なのですか?
山田 彬博
1,2
,
古江 秀昌
1,3
Akihiro YAMADA
1,2
,
Hidemasa FURUE
1,3
1生理学研究所 神経シグナル研究部門
2名古屋市立大学薬学部 神経薬理学分野
3総合研究大学院大学生命科学研究科 生理科学専攻
pp.130-132
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200120
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中枢神経系は興奮と抑制のバランスが重要である。もし何らかの可塑的変化が生じて抑制が興奮に転化すると,ニューロンの異常興奮が惹起される。これが痛みの伝達路で生じた場合,痛みが過剰に伝達されたり,アロディニアなどの異常な感覚が生じ得ることは容易に想像できる。近年,神経障害性痛が生じている状態では脊髄後角ニューロンの細胞内Cl-濃度が上昇していることが示され,それに伴い中枢神経系の主要な抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)による抑制が興奮に転化するのでは,と推測されている。では,細胞内Cl-濃度が上昇すると,どのような機序でGABAによる本来の抑制から興奮へと転化し,その結果,ニューロンの活動・興奮性はどの程度影響を受けるのだろうか?
本稿では細胞内Cl-濃度とGABAによる抑制効果を概説し,特に,これら抑制性シナプス伝達を考えるうえで見落とされがちな“shunting抑制”を説明する。そして,神経障害性痛の状態では,GABAで痛みが惹起され得るかを述べる。
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