徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 薬あれこれ
周術期の腎保護に有用な薬物とは
中山 力恒
1
,
中嶋 康文
1
,
溝部 俊樹
1
Yoshinobu NAKAYAMA
1
,
Yasufumi NAKAJIMA
1
,
Toshiki MIZOBE
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室
pp.748-750
発行日 2014年8月1日
Published Date 2014/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102191
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周術期に腎臓を保護するとは,どういうことか。一体,“なに”から守ろうというのだろう。手術侵襲や麻酔が患者の腎臓を危険に曝すのだとすれば,何をすれば患者の腎臓を守ることになるのだろうか。 “周術期”の“腎保護”を議論する場合,それは急性腎傷害acute kidney injury(AKI)から守ろうというのだろう。AKIの臨床症状は,尿量減少や体液電解質異常など,急性腎不全に準ずるが,術後に敗血症や呼吸器感染症を合併しやすく,いったん発症すると死亡率が高くなることが問題である。さらに,その発症率は非心臓手術で1.0%前後,心臓手術では最大20%と,遭遇する頻度も高い。したがって,本稿のテーマを,「周術期AKIを予防あるいは改善させる薬物とは」と言い換えても過言ではないだろう。 周術期AKIを予防あるいは改善させる薬物については,古くから検討されている。しかし,いまだ確固たる地位を築いた薬物はない。その理由として,周術期AKIの誘因が多岐にわたり複雑であること,また,最近までAKIは一定の診断基準さえ確立されておらず,発展途上の分野であることが挙げられる。腎保護に有用とされる薬物のおのおのに関するエビデンスは多く見つかるが,全体像の把握が難しく釈然としないのは,そのためであると考えている。
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