Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
がん薬物療法は心機能に影響を与えるものが少なくない.なかでもアンスラサイクリンは用量依存性に心機能低下をもたらす.乳がん術後患者を対象とした研究では,アンスラサイクリンを含む術後薬物療法は心不全を増加させることが示されている1).アンスラサイクリンはさまざまながん種でキードラッグであるが,有効であっても投与量に制限が発生する場合が多い.また,トラスツズマブも心機能障害を引き起こす薬剤として代表的なもののひとつである.乳がんをはじめ多くのがん種で用いられる.乳がん術後治療を対象とした研究では約3%に症候性心不全が発生するが2),転移性のがんでは投与期間が長期にわたる場合もあり,心機能障害の管理が非常に重要となる.心血管疾患(cardiovascular diseases:CVD)は予後に大きな影響を与える.CVDを持たないがんサバイバーよりも,CVDを有する非がん患者のほうが予後不良であることが示されており3),また早期乳がんの患者において,CVDが併存している患者では乳がん死よりもCVDによる死亡が多いことが示されている4).早期乳がんは良好な予後が期待されるがん種のひとつであり,がん治療による晩期合併症としての心毒性が,がんそのものよりも予後に影響を与える可能性がある.したがって,がん治療による心毒性をいかにして予防し避けるかということが,がん治療の成績そのものの改善につながるといえよう.がん治療中の心機能障害の管理にあたっては,心保護薬を用いた予防が重要な役割を果たす.そこで『Onco-cardiologyガイドライン』5)では,当初クリニカルクエスチョン(CQ)10として「がん薬物療法として心毒性のある薬剤の投与時に心保護目的に心保護薬(デクスラゾキサン以外)の投与は有用か?」というCQをあげた.最終的にはFRQ(future research question)の扱いとなったが,本稿ではその議論も合わせて共有する.
Copyright © 2023 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.