徹底分析シリーズ 産科出血は怖くない!(前編)
産科DICの病態と治療―フィブリノゲン欠乏を素早く察知し十分量の補充を
山本 晃士
1
Koji YAMAMOTO
1
1名古屋大学医学部附属病院 輸血部
pp.550-554
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102144
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
産科DIC(播種性血管内凝固症候群)は,DICをきたす病態のなかでも特に出血症状の強い病態であり,ときに危機的出血をきたす。産科DICの治療の基本は,第一に凝固因子補充療法,第二に抗凝固療法(+抗線溶療法)である。産科DICに伴う大量出血は急激に進行することが多いので,治療のタイミングと血液製剤や各種薬物の投与量が治療のカギとなる。型にはまった通り一遍の治療では,産科DICをコントロールして大量出血を防ぐことはできず,場合によっては生命の危険をまねく。
本稿では,最新の知見をもとに,産科DICにおける凝固障害の本態と,それを察知するための検査,タイムリーで効果的な治療について述べる。そのエッセンスは「急激に進行するフィブリノゲン欠乏状態をすみやかに察知し,時機を逸することなく迅速に十分量のフィブリノゲン補充を行って,止血を達成する」ことである。産科DICの特殊性をよく理解した産科医,麻酔科医による適切な対応が,妊産婦の生死を分けるのである。
Copyright © 2014, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.