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終末期患者の看取りとは
日本における死因の第1位は悪性新生物で,その死亡率(人口10万対)は2000年の235.2から2019年には304.2と増加傾向にある註。悪性新生物,いわゆるがんは,がんによって引き起こされる症状や治療に伴う苦痛などの身体症状だけでなく,気分の落ち込みなどの精神症状などさまざまな症状を惹起し,患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を低下させてしまうケースが多い。これらの症状を緩和するために,患者ががんと診断されたときから終末期の看取りまで,緩和ケアが継続して実施される。
緩和ケアは,患者とその家族のQOLを可能な限り維持していくことをめざし,終末期の看取りにおいては,患者と家族が最後の時間をどのように過ごしたいかを話し合い,できる限り一緒に過ごすことが,患者と家族のQOLを高めることにつながると考えられる。そのためには,患者の急な状態変化や差し迫った死を予測し,患者と家族の時間をなるべく長く確保できるように調整することが大切になると思われる。筆者自身,祖父が急変を起こして救急搬送された際に,医師より「1〜2日が山場です」と宣告され,家族と交代しながら付き添いをして最期を看取った経験がある。「あと2日しか一緒にいることができない」という思いから,仕事の後に無理をしてでも夜間付き添いをして過ごしていたが,2日が過ぎ,3日目には祖父の状態は少し回復したため付き添い期間が思っていたよりも長くなり,喜ばしい反面,体力の限界を感じていたことを覚えている。祖父は5日後に亡くなり,家族全員で看取ることができたが,付き添い期間がもっと長引いていたらちゃんと看取ることができただろうか,と当時を振り返って思うことがある。このような経験から,差し迫った死を正確に予測できたほうが,家族にとっても無理のない看取り環境を整えられるのではないかと筆者は考えている。その意味でも,終末期の患者の予後予測を正確に行うことは,緩和ケアにおいて重要な課題であるといえる。
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