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◆いつの頃からか,キャリーバッグを引く人を普通に見るようになりました。そして駅のマナー向上ポスターは,キャリーバッグを使う際は周りに注意しましょう,と呼びかけます。確かに,厄介者です。実際,あれに足下をすくわれそうになって,ヒヤリとした経験をお持ちの方も多いでしょう。かつては,成田空港などの“特別”な場所で,ビシっと制服に身を包んだパイロットやスチュワーデス(今は,キャビンアテンダントと呼びますね)が,颯爽と闊歩する姿のお供にあって,憧れの対象の一部だったのに。
なぜ,憧れから厄介者に成り下がってしまったのか。観察をしていて気がつきました。キャリーバッグを颯爽と引くには,持ち手,足下,バッグの車輪,の3点が形作る三角形が縦長にならないといけないと。そのためには,持ち手の位置が高くなければなりません。つまり,引きこなすには,それなりの身長が求められます(腕が短くても可)。この三角形が横長になると,周囲の足を引き倒しながら前進することになり,厄介者一直線。そんな人を見るたびに,「後ろにも目があったらいいのに」と思うのです。
◆とはいえ“後ろを意識する”のは,難しいことです。毎日の出勤前に後ろ姿まで鏡でチェックすることは,ファッション雑誌などでお勧めされても,なかなか習慣にはなりません。髪の寝癖も,「ま,結んでごまかすか」といった具合。だって,私には見えないんだも~ん。
服装ならば,「恥のかきすて」で済むかもしれません。しかし,後ろから見られているのは,服装や身だしなみだけではないはずです。そこにいるのは,後輩だったり,後進だったり,後世だったり。「自分には見えないから」と,後ろを意識の外に置いてしまうのは,次世代からの借金を積み重ねるどこかの国を例に出すまでもなく,恥ずかしいし,迷惑だし,無責任。
誰にでも,脇目も振らず必死で前へ前へと進む時期が必要です。でないと,進歩も成長もできません。ただし,前進を続けていれば,いつかは,後ろに控える存在の重みが増すようになるのです。そのとき,恥ずかしくない後ろ姿でいたいものです。
◆LiSAの正面が,「徹底分析シリーズ」と「症例検討」だとしたら,後ろ姿は?
先日,読者から「最近,Editorial拝見が興味深く読めるようになりました」というコメントをいただきました。後ろまでしっかりと読んでいただけていることに感謝しつつ,どこから見られても恥ずかしくない一冊にしなければと,背筋が伸びました。ただし,後ろばかりを気にしていたら,前方不注意で事故は必至。なので,キャリーバッグを引く人を見かけたら,自分の後ろを意識して,背筋を伸ばすようにしようと思います。
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