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■全国東日本大震災の被災地,宮城県石巻市で自称医師の男性が逮捕されました。無資格で医療行為に及んだというのではなく(もちろん疑わしいわけですが),現段階では医師を騙ったことが「医師でなければ,医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない」(第18条)に触れ,「50万円以下の罰金に処」せられるわけです。が,「ボランティアの専属医」と朝日新聞の「ひと」の欄で紹介されたことや,日本財団より100万円の助成金を受け取っていたことで,話がややこしくなっていきます。そうしたことはさておき,面白いなと思うのは,石巻市社会福祉協議会に提出された「医師国家資格認定証」なるものの存在。
ニセ医者事件はぽつりぽつりと報道されます。患者の証言はきまって「人の話をよく聞いてくれて,とてもいい先生でした」と,まるで本物の医者は患者の話に耳を傾けていないと言わんばかりの,マスコミの取り扱い。医療批判のステレオタイプな取り上げ方と言ってしまえばそれまでですが,そこにもいかばかりかの患者真理はあるわけです。こうしたニセ医者のなかには医師免許のコピーを偽造して,あるいは別人のものを借用して医療行為を行っていることもあったように記憶しています。で,その医師を雇う時点での病院側の調査の不十分さがやり玉に挙がるわけです。でも,現行の免許証では,医師であることの確認って,すごく難しいんじゃないか,と思う次第。
今回提示されたのは,住民基本台帳カード(ICカード)を模して作られた顔写真入りのカード。ポイントは,顔写真ではないかと考えられます。というのも,警察官をはじめほとんどの職種でなにがしかの身分証を携帯しているわけです。身近なところでは運転免許証。高速道路で成田空港に入るときなど,検問で提示させられる身分証には顔写真がなければいけません。以前,アマチュア無線技士の免許証を示して変な顔をされましたが,これは国家資格で写真もあります。ふぐ調理師免許(持っていませんけど)だったらはたしてどうであったか…。
普段,われわれが病院で診察を受けるとき,いちいち医師であることを確認してはいません。病院での医療行為が医師により行われることを前提にしているわけですから。でも,被災地のように,病院というワクがなくなると,医師であることを証明すること,確認することは難しくなります。となると,患者は何を頼りにその人を医師と認めるのか,それ以上に,医師自身,何をもって自らを医師と証明するのか。そのとき,表彰状のような医師免許がどれほどの効果,役割を果たせるのか…。
死亡後は国に返却する義務がある医師免許,とはいえ,返還されないままの医師免許が結構あるとも聞きます。そのことが,実際の医師数の把握に多大なる影響を与えている。ということは,免許をもたないニセ医者がいる一方で,医籍には登録されているが本人がいない医者がいることになります。これってもしや,厚労省の作るニセ医者になりますよね。
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