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■10月発行のIntensivist(Vol.4 No.4)の特集は「呼吸器離脱」。その中に“気管切開の虚像と真実”と題された項目があり,そこで,エジプトのパピルスやインドの『リグ・ヴェーダ』に気管切開同様の処置が記述されている,と気管切開の歴史に触れています。で,ネット検索すると,「Homerosの伝記はAlexander大王が窒息した兵士の気管を自らの剣で切開し命を救ったと伝えている~」という文書が見つかりました。「Homerosの伝記」が何を指すのかわかりません。それならばと,英語で検索すると,「Homer around 1000 BC reported that Alexander the Great saved the life of a soldier from suffocation, by making an opening in the trachea using the tip of his sword.」を見つけました。Indian Journal of Otolaryngology and Head and Neck Surgery誌(1995年)の一論文。これとまったく同じ文章がInternet Journal of Otorhinolaryngology誌(2006年)のHistorical Review Of Tracheostomyと題された論文にもありました。この記述,気に入られたのか,けっこうヒットします。
そもそもホメーロス,生没年不詳,紀元前9~8世紀の詩人(実在したかどうかも疑問)とされています。まあ,紀元前1000年はよしとして,その彼がアレキサンダー大王の気管切開を記すのです。これがおかしい。話としてはおもしろいですが,紀元前356~323年のアレキサンダー大王のエピソードを紀元前1000年のホメーロスが書けるわけはない…。まあ,ちょっと考えれば,すぐにわかりそうなもの。で,別のネットには,「The poet Homer is said to have made a reference to the procedure in the eighth century B.C.」とあり,こちらのほうが曖昧な分,間違いにはなっていない。曖昧なほうが正しいなんて,ちょっと変ですが…。
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