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日本における死因のトップは,1981年以降,一貫して悪性新生物である。癌の臓器別死亡数は2009年の時点で多い順から,肺癌(67583),胃癌(50017),大腸癌(42434),肝癌(32725),膵癌(26791)である。最近5年間で,主として分子標的治療薬(表1)の登場により進行癌の抗癌剤治療法が大きく変化した。なかでも治療効果予測因子としてのバイオマーカーが判明している,肺癌〔上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異〕,胃癌〔ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)遺伝子変異〕,大腸癌(K-ras遺伝子変異),乳癌(女性ホルモン受容体陽性,HER2遺伝子変異),慢性骨髄性白血病(BCR遺伝子変異)などで,分子標的治療薬による治療効果の改善が著しい。
一方で,これらの分子標的治療薬に特徴的な間質性肺炎や出血,血栓塞栓症,消化管穿孔,心筋障害,手足症候群,末梢神経障害,皮膚障害などの副作用も報告されている。
また,治癒を目指し,術前に腫瘍縮小ないし病期改善(downstaging)を目的として化学療法や化学放射線療法を行う術前補助療法neoadjuvant therapy(NAT)も頭頸部癌や肺癌,食道癌,胃癌,大腸癌,乳癌,卵巣癌,子宮頸癌,胚細胞腫瘍などで行われている(表2)。
NATの利点は,downstagingのほかに,切除検体の組織学的検索により化学療法,放射線療法の感受性試験が可能となることが挙げられる。一方で不利な点は,薬剤耐性を誘発する可能性や,無効だった場合は局所コントロールが遅れ,転移による広がりを助長するリスク,あるいは,術前に放射線治療が行われた症例は手術操作の難易度が高まり,術後合併症のリスクを高める,などである。
本稿では,これらの腫瘍のNATとその副作用に焦点を当てて解説する。
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