徹底分析シリーズ 最近の癌治療
巻頭言
加藤 洋海
1
1兵庫県立がんセンター 麻酔科
pp.115
発行日 2012年2月1日
Published Date 2012/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101443
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- 文献概要
がんセンターに勤務する者に限らず,臨床麻酔に従事する多くの麻酔科医にとって,癌根治手術は最も遭遇する機会の多い術式であろう。近年,鏡視下手術の技術的進歩やロボット手術の登場によって,癌根治手術も様相を変えつつあるが,癌治療の進歩は手術法の変化にとどまらず,化学療法や放射線治療の領域でも次々と新しい治療法が提唱されている。さらに,これら三つの治療法(trimodality)を組み合わせて治療成績を向上させようとする試みも精力的に行われており,すでに一部の腫瘍では,術前の化学療法や化学放射線療法(neoadjuvant therapy)が標準になっている。このように,癌治療が内科医や放射線治療医,外科医らによるチーム医療となりつつあるなかで,われわれ麻酔科医も癌治療チームの一員として機能しなければならない。
これまで,抗癌剤や放射線療法は,麻酔科医にとって少々縁遠い存在であったと思う。しかし,血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の登場は,麻酔科医の目を化学療法に向けさせるよい機会となったし,neoadjuvant therapyの標準化によって,術前化学療法や放射線療法も特殊な術前状態ではなくなった。麻酔科医が,術前に実施される癌治療に関する知識を外科医らと共有して手術に臨む時代は,すでに到来しているのである。
本徹底分析では,抗癌剤や放射線治療の副作用などに加え,精神腫瘍科の立場から見た悪性腫瘍患者の管理など,手術療法と関連しながらも,われわれが放置しがちであった分野にもスポットライトを当てた。筆者も,この特集を読むすべての麻酔科医と一緒に最新の癌治療の方向性を再確認できることをうれしく思う。
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