徹底分析シリーズ 周術期の低体温
麻酔で低体温が起こる機序―周術期低体温の予防とアウトカム改善は道半ば
溝部 俊樹
1
MIZOBE, Toshiki
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室
pp.2-5
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101418
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ドイツのWunderlichが,15年以上にわたって行った体温測定の結果を著したのが1868年。その数年後に,ニューヨークのSeguinは,血圧,呼吸,脈拍,体温を“バイタルサイン”と名づけ,カルテに記載することを広めた。バイタルサインとしてカルテに記載された体温は,病状の把握に大きく貢献したが,麻酔チャートに記載された体温は,長い間,単なる情報として何ら役立つこともなく,顧みられることもなかった。
全身麻酔中の体温低下は,一般に環境への熱喪失によって起こると考えられていたが,Cohen1)は1967年に,熱の体内移動(redistribution),すなわち中枢から末梢への熱の移動によって中枢温が低下するとの考えを披露している。“preliminary report”と論文のタイトルに記載されているが,残念ながら彼がこの概念に対して科学的なアプローチを行った形跡はない。
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