徹底分析シリーズ 周術期の低体温
中枢神経系への低体温の影響―低体温は麻酔科医にとって敵?それとも味方?
河野 安宣
1
,
川口 昌彦
2
KAWANO, Yasunobu
1
,
KAWAGUCHI, Masahiko
2
1奈良県立医科大学 集中治療部
2奈良県立医科大学 麻酔科学教室
pp.8-13
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101420
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
麻酔科医であれば,周術期の低体温はできれば避けて通りたい状態であろう。麻酔からの覚醒が悪く,ようやく患者が覚醒したかと思えばシバリングが生じて頻脈や高血圧の対処に追われる。ほかにも低体温は,薬物代謝へ影響を及ぼしたり,出血傾向,感染,不整脈など種々の合併症につながることも多い。最近では術後回復強化enhanced recovery after surgery(ERAS)プロトコールでも,感染症増加や線溶系亢進,さらには入院期間の延長などの影響を考慮して,周術期低体温の防止の必要性が述べられている。
周術期を管理する麻酔科医にとって,周術期の低体温は上記のように負のイメージが強いと思われる。しかし,視点を変えると,わずか2~3℃の軽度低体温には脳保護作用があるという,麻酔科医にとっても患者にとっても非常にありがたい効果も低体温にはある。2002年に発表された二つの無作為化比較研究1,2)の結果を受けて,院外心肺停止後の意識障害に対する脳低温療法をはじめ,脳保護を目的とした低体温療法が,近年再注目されている。
本稿では,以上のような二面性を併せもつ低体温とその中枢神経系への影響について解説する。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.