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Anesthesiology
Editorial:
McDonagh DL, Mathew JP. Perioperative stroke: where do we go from here? Anesthesiology 2011 ; 114 : 1263-4.
Article:
Mashour GA, Shanks AM, Kheterpal S. Perioperative stroke and associated mortality after noncardiac, nonneurologic surgery. Anesthesiology 2011 ; 114 : 1289-96.
周術期の重大な合併症の一つに脳卒中がある。過去には,結腸切除術で0.7%,股関節全置換術で0.2%,肺切除術で0.6%という発生率であったという報告がある。
Mashourらは,American College of Surgeons National Surgical Quality Improvement Program(ACS-NSQIP)データベースを用いて,非心臓手術の周術期における脳卒中の発生頻度と,その危険因子について解析した。2005~2008年に250施設で実施され,一般外科や,整形外科,泌尿器科,耳鼻咽喉科,形成外科,胸部外科,婦人科など,非心臓手術を受けた52309名の患者のデータを用いた。
周術期脳卒中の頻度と30日死亡率をアウトカムとして,1人の患者について135の因子について検討した。周術期脳卒中の発生頻度は0.1%であった。独立危険因子には,年齢62歳以上〔オッズ比(OR)3.9〕,術前6か月以内の心筋梗塞(OR3.8),周術期急性腎不全(OR 3.6),脳卒中(OR2.9)や一過性脳虚血発作(OR1.9)の既往,高血圧(OR2.6),透析(OR2.3),重症慢性閉塞性肺疾患(OR1.8),喫煙(OR1.5)などが含まれた。BMI 35.0~40.0の肥満は,むしろ脳卒中の保護因子(OR0.6)であった。危険因子が多くなれば周術期脳卒中の発生頻度は上昇し,二つ以内の場合は0.1%,三つか四つの場合は0.7%,五つ以上の場合は1.9%であった。周術期脳卒中を起こした485名の30日死亡率は,8倍(95%信頼区間4.6~12.6)に上昇した。
脳卒中の原因として,心臓内血栓による塞栓,脳血栓,脳静脈洞や脳静脈の血栓による静脈梗塞,脳低灌流などが含まれる。この研究からは,周術期脳卒中の原因は不明であり,スタチン,抗血小板療法,抗凝固療法,抗炎症療法などの役割も不明である。今後,これらの分析をするための研究が必要である。
ここに挙げられた危険因子を複数もつ患者では,非心臓手術であっても周術期脳卒中について説明をしておくべきであろう。
さて,あなたが今日担当する患者さん,脳卒中は起こしそうもないですか?
(稲田 英一)
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