症例検討 鎮静
巻頭言
阪井 裕一
1
1国立成育医療研究センター 総合診療部
pp.147
発行日 2011年2月1日
Published Date 2011/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101139
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- 文献概要
鎮静は厄介である。全身麻酔のほうがよほどわかりやすい。例えば,鎮静レベルは,
・minimal sedation:呼びかけに正常に反応する,認知機能は異常,呼吸は正常
・moderate sedation:少しぼんやりしているが呼びかけや触診に反応する,呼吸は正常
・deep sedation:呼びかけに反応しない,強い痛み刺激にのみ反応,自発呼吸は不十分でしばしば上気道閉塞を起こす
とされているが,これらは,general anesthesia(刺激に対する反応がまったくない,気道確保や補助呼吸が必要)に至る連続したスペクトラムである。レベルは容易に変わり得る。いや,必要に応じて変えざるを得ない。
麻酔科医は,鎮静はほとんど麻酔と同じ,と心得ているだろう。ところが麻酔科医以外の医師は,鎮静は麻酔と違う(だから自分でもできる),と思っている。このギャップが恐ろしい。
小児では,脳波や超音波といった検査であっても鎮静が必要になることがあるし,暗く騒音に満ちたMRI検査室のようなモニタリングのできない環境下であれば,鎮静が必須になってしまう。一方,成人では,協力が得られるからといって,気道確保や呼吸に影響しかねない気道の内視鏡検査を検査室で鎮静下に行っている。鎮静/全身麻酔をよく知っている麻酔科医にこそ,こういった場面でのリスク・マネージャーやコーディネーターとしての役割が求められよう。
今回の症例検討では,周術期の鎮静を取り上げたが,麻酔科医は手術室の外にも目を向ける必要がある。
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