徹底分析シリーズ 麻酔科医とタンパク質の一生
破綻したタンパク質の生涯と疾患
岩坂 日出男
1
Hideo IWASAKA
1
1大分大学医学部 麻酔学講座
pp.32-37
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100838
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
われわれの人生同様にタンパク質も一生のなかでは,さまざまな障害を乗り越えながら合成から分解までを経験する。このなかでは,不良品タンパク質や傷害を受けて変性したタンパク質などが生じる。これらが細胞内に蓄積してしまうと細胞自身の破綻,さらには個体の破綻にまで至ることになる。これを防ぐためにタンパク質は,細胞内で品質管理が行われ,不良品は除去される仕組みが構築されている。
この品質管理を行っているタンパク質に分子シャペロンと呼ばれる一群のタンパク質がある。生体に侵襲が加わるとその結果としてタンパク質の変性が生じるが,分子シャペロンが働き,変性タンパク質を再生しようとする。しかし,侵襲が大きいと,多くのタンパク質が変性してしまうため再生が間に合わなくなり,細胞死,臓器傷害につながると考えられる。したがって侵襲前,たとえば手術前に分子シャペロンを誘導しておけば侵襲に伴う傷害が軽減できる可能性がある。また,品質管理が破綻した結果,遺伝病や変性疾患が生じることがあるが,以下これらについて概説しよう。
Copyright © 2010, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.