Japanese
English
特集 低酸素と生体
低酸素への順応と破綻
Acclimatization to Hypoxia and its Failure
桑平 一郎
1
Ichiro Kuwahira
1
1東海大学医学部付属東京病院呼吸器内科
1Department of Medicine, Tokai University Tokyo Hospital
pp.1127-1134
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100123
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
生理学では,順応,適応,応答など様々な言葉が使用される.低酸素への順応について論じる前に,まず言葉の違いを明確にしたい.順応(acclimatization)とは,生物が有する機能ならびに形態が,その環境での生存に適合するよう変化することを意味する.数時間から数週間の時間的経過をとり,その変化は可逆的,非遺伝的である.これに対し適応(adaptation)とは,機能的,形態的変化がその環境での種の繁殖に適合するよう変化すること,あるいはその過程を意味する.時間的には世代を超えた変化となり,不可逆的,遺伝的である.一方,環境の変化に対し何らかの急激な変化が生じる場合,これを反応あるいは応答(response)と呼ぶ.
生理学からみた低酸素への順応と破綻という課題は,あまりに広い範囲の問題を取り扱うことになる.臓器,組織,細胞,ミトコンドリア,解糖系・TCAサイクルと電子伝達系の各酵素群など,すべての段階で異常環境に対する順応が生じる.本稿では“呼吸と循環”という立場に立ち,臓器生理学的側面から,低酸素という異常環境に対して,換気と肺循環が如何に順応し組織酸素加(tissue oxygenation)を維持しようとするかについて解説する.肺循環については大きな予備能力があるため,特に低酸素下で運動負荷をかけた際の変化,更に破綻の結果として如何なる病態が生じるかについて言及したい.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.