麻酔の知識・5
前投薬 筋弛緩剤
沼田 克雄
1
1専売公社東京病院麻酔科
pp.62-63
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914088
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前投薬
手術に先立って,全く不安も恐怖も感じないという患者はむしろ少ないであろう。患者の立場からは,できるだけそういう苦しみがないようにと願うのは当然であり,ここに鎮静剤が要求される理由がある。医師の立場からも,不安と興奮に苛まれている患者の状態は,けっして望ましいとはいえない。まして泣き叫ぶ子供をむりやりにおさえつけて麻酔の導入を行なうなどは,単にやりにくいというだけにとどまらず,子供の精神発育上に少なからぬ傷あとを残すとまでいわれている。
また,麻酔の導入の間,あるいは手術中に不愉快な反射(たとえば喉頭痙攣,不整脈,心停止など)が起こったり,気道に分泌物がたまってぜいぜいいうようなことも避けたい。代謝も低下させておいたり,痛みに対する感受性も鈍くしておけばもっとよいであろう。というわけで,安全な麻酔を容易にかけられるように,術前に適当な薬をあらかじめ投与しておく。これが前投薬である。
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