薬の臨床
前投薬による術後疼痛軽減法
森 新太郎
1
Shintaro Mori
1
1住友病院産婦人科
pp.283-285
発行日 1968年3月10日
Published Date 1968/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203864
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はじめに
開腹術後の疼痛除去に対しては従来モルフィン系麻酔剤が常套手段として使用されていたが,最近非麻薬性の強力鎮痛剤が発現するに及び開腹術後の苦痛除去法の研究が進められてきた。しかし,これらの薬剤はいずれも対大脳中枢性のものであり,開腹術後の劇痛鎮圧にはやはり頻回あるいは多量を使用しなければならぬのでこの面の障害が生ずることは当然である。すなわち,開腹術後の苦痛を大別してみると(a)腹壁創の疼痛(b)操作された内臓諸器官より発する疼痛(c)術後という苦悩感などがあるが,最も患者を苦しめるものは(a)であり,しかもこの激痛を鎮圧するに要する鎮痛剤もいきおい多量となり,これに起因する副作用,後障害も等閑視できぬ状態である。そこで私は従来よりの考え方を変えて,術後発現するであろう疼痛をなんらかの前処置で程度を弱めておくことにより結果的にみて術後の鎮痛剤の頻回あるいは多量使用を防止するという方法に着想し,まず術前に消炎酵素剤を投与することにより有利な効果を得たことを報告した(産と婦,第33巻,第9号,昭41,開腹術後疼痛軽減に対する消炎酵素剤の臨床研究)。続いて同様の着想に基ずき非ステロイド性抗炎剤および抗ブラディキニン剤を術前に使用しそのおのおのに有利な効果をえたことも報告した。今回は私の着想を決定づけるために今までの薬剤を混合併用することにより,すなわち術前に消炎酵素剤,非ステロイド性抗炎剤および抗ブラディキニン剤の3者を併用投与することにより,術後の疼痛軽減に著効あることを発見したので報告する。
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