徹底分析シリーズ 高齢者の大腿骨頸部・転子部骨折
巻頭言
志賀 俊哉
1
1東邦大学医療センター大橋病院 麻酔科
pp.1167
発行日 2008年12月1日
Published Date 2008/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100536
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LiSAでは12年前(1996年11月号)にも大腿骨頸部骨折を特集している。しかし,ここ10年で医療はすっかり様変りし,10年以上前のエビデンスはもはや通用しなくなった。「大腿骨頸部骨折」という呼び名事体,すでにout of dateのようだ。手術申込書に,“hemiarthroplasty”や“Hansson pin”,“γネイル”などと書かれていても,これら術式の違いや適応を正確に述べることのできる麻酔科医はどれだけいるだろうか。用語体系(nomenclature)の変化についていけないと,整形外科医とのコミュニケーションもままならない。
今日,医療界ではevidence-based medicine(EBM)が世界的な潮流となった。古典的命題ともいえる「大腿骨頸部骨折の麻酔は,全身麻酔か,区域麻酔か」や「手術をすぐやるべきか,待つべきか」といったテーマも,EBMの視点から洗い直す必要がある。また,フォンダパリヌクスやエノキサパリンといった抗凝固薬の登場により,従来の麻酔法や術後鎮痛法も変化を迫られることとなった。末梢神経ブロックを導入した施設も多いと思うが,実際にどのブロックをどのように,どのタイミングで使い分けるのかの判断は容易ではない。
整形外科医から大腿骨頸部・転子部骨折の麻酔の依頼を受けたあなたが,本徹底分析を手に取って,麻酔の一助としていただけたら幸いである。
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