徹底分析シリーズ NSAIDsを知る・使いこなす
術前からNSAIDsを服用している患者に対する対応
小杉 志都子
1
Shizuko KOSUGI
1
1慶応義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.680-683
発行日 2008年7月1日
Published Date 2008/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100142
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
NSAIDsのなかでもアスピリンは,主に抗血小板薬として使用される。アスピリンは,血小板COX-1を不可逆的に阻害することで抗血小板効果を発揮する。通常使用量は50~150mg/日程度であるが,体重に応じて325mg/日まで増量されることもある。アスピリンは,虚血性疾患(心筋梗塞や脳卒中)発症後の再発率を,25~30%減少させることが明らかとなり,これらを発症した患者にとっては生涯継続すべき薬物である。
また抗血小板薬には,アスピリン以外に,チエノピリジン誘導体(チクロピジン,クロピドグレル)とGPⅡb/Ⅲa阻害薬がある。チエノピリジン誘導体は,血小板のADP受容体を阻害し,抗血小板効果を発揮する。チエノピリジン誘導体の使用によって,出血時間は,1.5~3倍に延長する。アスピリンとの併用療法で使用されることが多く,不安定狭心症における心筋梗塞の発症率や,冠動脈ステント後の血栓形成による再虚血を減少させることが明らかとなった。GPⅡb/Ⅲa阻害薬には,abciximabなどがあり,冠動脈ステント後の早期の血栓の予防に使用されるが,日本では未売である。
冠動脈疾患患者,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後,あるいは脳梗塞再発予防として,これらの抗血小板薬は広く用いられており,われわれ麻酔科医が抗血小板薬使用患者に遭遇することは珍しいことではない。周術期には,抗血小板薬継続による出血量の増加のリスクと,投薬中止による冠動脈血栓あるいは脳梗塞の再発のリスクの双方があり,ジレンマに陥る。そこで,本稿では,アスピリンやその他の抗血小板薬を服用している患者に対する対応について解説する。
Copyright © 2008, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.