症例検討 モニタリングをめぐるトラブルとその対処法3
体温計:膀胱温と直腸温で差がある。
各部位の生理学的特徴,その意義を理解し,測定結果を判断すること/膀胱温と直腸温のどちらを選んでも,患者に触れることも大事
信太 賢治
1
,
池山 貴也
2
Kenji SHIDA
1
,
Takanari IKEYAMA
2
1昭和大学医学部 麻酔科学講座
2国立成育医療センター 手術・集中治療部
pp.502-505
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100118
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ヒトでは血液還流の豊富な重要臓器の温度は約37℃に保たれている。この部位の温度は,中枢温,核心温,核体温,深部温などと呼ばれる。一方,外気温の影響を受けやすい体表部の温度は表面温,外核温,外層温などと呼ばれる。
恒常性の維持に重要な役割を果たす中枢温をモニタリングすることは,手術室やICUでは大切となる。体温調節の中枢は視床下部に存在しており,視床下部を還流する血液温によって体温が設定されることからこの部位の血液温が中枢温といえる。信頼性の高い中枢温を得るには,肺動脈・食道下部・鼓膜・咽頭など,血液還流の豊富な部位や脳内の温度に近い部位をモニタリングできればよい。
しかし一般的な手術時やICUでは,その簡便さなどから,中枢温を推測する指標として,膀胱や直腸の温度測定が行われている。通常では,膀胱温や直腸温は中枢温を示すよい指標となるが,膀胱温はあくまでも膀胱内温度,直腸温はあくまでも直腸内温度であることから,膀胱内や直腸内の温度に影響するさまざまな要因を把握する必要がある。
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