症例検討 モニタリングをめぐるトラブルとその対処法3
体温計:低体温人工心肺中,直腸温,食道温,鼓膜温が大きく異なっている。
時間的変化が最も遅い直腸温を体温制御の指標に/部位(臓器)温度の特徴を理解し,温度変化を判断,対処できる力を身につける/直腸温は骨盤内臓器の温度,食道温は大動脈・左心房の温度,鼓膜温は内頸動脈温に依存する
津崎 晃一
1
,
中西 一浩
2
,
鈴木 健一
3
,
藤井 善隆
4
Koichi TSUZAKI
1
,
Kazuhiro NAKANISHI
2
,
Kenichi SUZUKI
3
,
Yoshitaka FUJII
4
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
2日本医科大学 麻酔科学教室
3日本医科大学附属病院 ME部
4東邦大学医学部 麻酔科学第一講座
pp.486-493
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100116
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体温モニタリング:測定部位による違いを理解しよう!
体温調節は主に視床下部で行われるが,脳幹や脊髄などの構造も一部関与すると考えられている。体温は中枢温(核心温)と末梢温(外殻温)の二つのコンパートメントにわけて考えるのが一般的であり,前者の測定には直腸温や膀胱温,食道温,鼓膜温,腋窩温,肺動脈温(血液温)などが選択される。しかし,中枢コンパートメントの体温は必ずしも均一でなく,測定部位近傍の平均的な熱容量や比熱の違い,または測定部位による特徴*1に左右されるため,個々について理解しておく必要がある。
図1は,弓部大動脈瘤に対する人工血管置換術において,超低体温循環停止に逆行性脳灌流を補助手段として加えた場合の典型的な温度変化を追ったものである。ここでは,中枢温の測定部位として,直腸温や膀胱温,肺動脈カテーテルによる血液温に加えて*2,脳保護に対する配慮から鼓膜温*3がモニターされている。また,人工心肺下に体温制御を行うための送血温と脱血温が示されている。
人工心肺による人為的低体温は,人工肺に組み込まれた熱交換器に冷温水槽からの冷却水を供給することで行われ,その水温と給水流量の両者から送血温が調節される。図1の例では,直腸温として25℃を目標値に設定し,初期の比較的急速な送血温低下(冷却操作)に続いて,脱血温,血液温,鼓膜温の低下が認められるが,膀胱温や直腸温は,これらの変化にかなり遅れて低下することが明らかである。
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