機器性能の試験法 自動分析装置の性能確認試験法・15
セル内温度の経時変化
吉本 茂
1
1大野記念病院中央検査部
pp.253-258
発行日 1999年3月1日
Published Date 1999/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903740
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はじめに
臨床化学検査領域の自動分析装置において,恒温槽内の温度表示はほとんどの機種で可能であるが,セル内温度を表示できる装置はない.また,検体の分注から結果の出力まで反応温度の経時変化を考えると,一般的には37℃の恒温槽の中でセルは加温されていて,検体,試薬,攪拌のための撹拌棒などが順次反応セルに入っていくため,セル内の溶液温度はその都度変化している.さらに,その変化のしかたは機種の特性により多種多様である.このような背景の中での反応中のセル内温度は,反応速度を大きく左右する因子であり,特に酵素測定の正確性を高めるうえでも,その温度特性を知ることは分析条件の測光開始時間を決定するに当たり極めて重要なことである.
セル内温度の確認法は,温度計の挿入が不可能なフローセル内反応液温度の確認をすることを目的として,pH指示薬を用いる方法1,2)が1976年から実際の温度測定として試みられた.この方法を改良し,多点測光方式の自動分析装置に応用して“pH指示薬を用いたセル内温度モニター法3)”を日本臨床化学会機器専門委員会が試験法として提示したので,その方法に基づき,日常検査でよく使用されている自動分析装置について,セル内温度の経時変化について解説する.なお,表現している温度(℃)は絶対温度ではなく,吸光度から計算により求めた換算温度(calcurated temperature)3)のことである.
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