報告
体温調節に於ける温度感覺及び体内温度分布の意義
緒方 維弘
1,2
1京都府立醫大
2熊本醫科大學體質學研究所
pp.128-133
発行日 1951年12月15日
Published Date 1951/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905628
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1 體温調節機轉發現と温度感覺
體温調節中樞に關しては,1884年にAronsohn及びSachs(1)が線状體の側室に臨んだ部分の中央部即ち尾状核を穿刺すると發熱を誘發する事を發見して以來,この部を中心として幾多の検討が行われて來たのであつたが,この種の報告中最も新しく且代表的な業績としてはRanson(2)一派のものではないかと思う。氏等はHorseley Clarkの装置を用いて,目的とする腦部位の破壞,刺戟或は加温を行つたのであるが,腦の或る特定の部位が加熱せられた場合に限り著しく呼吸が早くなり,特異なアエギ呼吸が現われ,血管が擴張し,發汗するが,直腸温は多くの場合低いのであつてこの脳加熱中決して上昇する事がない事を明らかにした。このような反應をひき起す部位は視束交叉と前交連との間の氏等のpreoptic regionと呼んでおる部位が中心であつて,更にこの部から視床下部の背側部と視床の腹側部を通じて後方に行つても同種の反應は認められるが,離れるに從つてその程度が著しく減弱する旨を述べている。又視床下部の灰白隆起部及び乳頭體部の外部を兩側性に破壞すると,普通の室温でも定常體温を維持して行く事が出來なくなるが,かかる動物を寒冷環境に置くと體温が著しく下降するにもかかわらず,寒冷諸反應即ち身ぶるいとか立毛とかの現象が現われない。即ちこの部に體温の保持中樞と熱産出中樞があるとなした。
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