寄書
生物物理学の動向と問題
若林 勲
1
1東京大学医学部生理学教室
pp.293-296
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906211
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生物物理学会の誕生
生物物理学とは何かというような話は後まわしにしてわが国で生物物理学のいろいろな会合が近年になつてさかんに開かれるようになつた。昭和28年岡・杉田氏等の生物物理懇談会,久保氏等の理論生物学会,翌29年には物理学会のなかに生体物理の分科会が設けられ,昭29年日本物理学会・理論生物学会主催の生物物理討論会,昭30年京大基研で生体物理セミナー,同年名取氏等の生物物理化学シンポジウムの発足があり,昭和35年に至つて物性研で生物物理研究会,7月には箱根で生物物理座談会,8月には志賀高原で若手グループの集まりにて生物物理学会設立に関する討論会が開かれ,遂に機が熟して生物物理学会が発足することとなり,12月東京大学で発会式が行われた。その会の綱領とするところは"生命現象の基本的理解"であるとされている。
これらの動きの原動力となつた人々は主として日本の物理学会・生化学会に属する学者で昨年の生体の科学に寄稿された小谷正雄氏の一文によつてその趣旨が明らかにされている。生物物理学の定義などいうことは兎も角として氏のいわれるところを読むならば"物理学が古典物理学から量子物理学に脱皮し少なくとも化学の基礎は完全に物理と融合して地続きになつてしまい,他方で基礎医学・生物学・生物化学などの目覚しい進歩によつて多くの生体現象の機構が解明されつつあり,そのあるものは分子的なレベルでの問題にまで堀下げられております。
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