巻頭言
生物物理学研究の多様性
右衛門佐 重雄
1
1名古屋大学
pp.257
発行日 1966年12月15日
Published Date 1966/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902701
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ケンドリュー,ペルツやワットソン,クリックらの仕事以来,分子的生物学のめざましい発展がみられ,生命現象に対する分子のレベルにおける統一的な見解によつて,生物学者,生理学者,生化学者,生物物理学者たちが共通のことばで協同研究ができるようになり,最近これら諸学の協力によつて数々の豊かなみのりが得られ,生物学的物質の存在様式や生物学的諸過程が物理化学的手法で研究される場合,どのような形でなされるかという多くの実例が示されてきた。これらの実例は,他の自然科学の場合と同じく,将来の生物物理の問題の性質について貴重な見透しを与え,これらの事実の発展によつて,生物物理学の内容が形成されていくことはいうまでもない。
日本生物物理学会では,研究連絡や協同研究の便宜のため,かりに,生物物理の研究分野を,生体物性,分子遺伝,分子生理,細胞生物,生体機能の5つに分類しているが,これらの分野においても,種々のレベル,組織細胞,分子集合体,分子,電子などのレベルの研究がありうるし,研究法の色彩にしても,生物学的,生理学的,生化学的,物理学的,数学的,あるいは医学的特徴をもつたいろいろのものがありうる。
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