綜説
ホルモンの作用機序について
鈴木 光雄
1
1群馬大学内分泌研究所 生理学研究室
pp.54-61
発行日 1959年4月15日
Published Date 1959/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906063
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
いとぐち
ホルモンは,何らかの作用機転を通じて,生体の物質代謝を調節して,統一的に生命現象の維持にはたらいている。このホルモン作用の特徴は,以下のごとき点である。第1にホルモンの作用濃度が著しく低いことである。すなわち,甲状腺ホルモンについていえば,血中のホルモン量は,ヨード量として4〜8μg/dlであり,thyroxine量として10−7M前後となる。また卵巣の卵胞ホルモンはesterone量として10−8M程度である。しかもこれらホルモンの生理的濃度範囲は狭く,血中のホルモンヨード量が2μg以下,または10μg以上となると,すでに病的な代謝異常が起る。また月経週期における卵胞ホルモン量の変化は,1〜2×10−8Mの範囲にある。このように,正常のホルモン濃度は極めて低く,かつ至適の濃度範囲内になければならない。第2の点は,それぞれのホルモンの器管,組織,細胞に対する作用特異性の問題である。脳下垂体前葉ホルモンの多くは,それぞれ特殊の器官に作用する。また甲状腺のホルモンは心筋に対して副腎皮質,髄質のホルモンは,それぞれリンパ組織及び心臓血管系に対して特に強い影響をあたえるごときである。すなわち,それぞれの標的器官(target organ)がある。このようなことからホルモンの作用発現の場の特殊性も,ホルモン作用にとつて本質的に重要なことと考えられる。第3は,ホルモン作用の相互協関性の問題である。
Copyright © 1959, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.