通信
日本の生理学の向上のために(日本生理学会あての通信)
田崎 一二
1
1National Institut of health, Bethesda 14
pp.219-223
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905877
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1.この通信の目的
私がこの通信のなかで述べようとしていることは,まず今の日本の生理学の水準が世界的に見て甚だ低いこと,つぎに日本生理学会がこの低い水準を向上させる義務をもつていることとを,すなおに認めていただける人達にだけ明瞭な意味をもつている。日本におけるおびただしい学位論文の数と数百にものぼるであろう生理学教授の数を海外にたいして誇らしく思う者がかりにあつたとしても,私は之に反対する"臨床的な手腕"をもち合わせては居ない。また他人にやらせておいて後で我がもの顔に発表する連中の仕事の低さなども,いまさら議論してみる元気もない。この低い日本の生理学の水準は最近,向上どころか,かえつて低下の途をたどつているようにすら私には見える。
べつに細い数字などによらなくとも,イギリスとアメリカが世界最高の生理学の水準を維持していることを,大多数の人々は認めるであろう。内容的にみればアメリカの水準は国外から輸入した学者の力で保たれている部分もあり学者の平均の力量もイギリスのそれに比して高くはないのであるが,アメリカは,イギリスと違つて,中枢神経から音の感覚生理に至るまで欠けることなく良い水準をもつていることも否めないであろう。次にスエーデン,ドイツ,フランス,スイスあたりの国々がつゞき,更にそのつぎにデンマーク,ベルギー,オランダ,カナダ,オーストラリヤなどが位しているように私には思われる。
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